たまに映画、展覧会、音楽など。

村上春樹、川上未映子『みみずくは黄昏に飛び立つ』

みみずくは黄昏に飛びたつ―川上未映子訊く/村上春樹語る― 作者: 川上未映子,村上春樹 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2017/04/27 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る なぜ村上春樹だけが、こんなにも個性のある作家と言われているのだろうか…

又吉直樹『劇場』

劇場 作者: 又吉直樹 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2017/05/11 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る どこでもないような場所で、渇ききった排水溝を見ていた。誰かの笑い声がいくつも通り過ぎ、蝉の声が無秩序に重なったり遠ざかったり…

「大エルミタージュ展 オールドマスター西洋絵画の巨匠たち」(森アーツセンター・六本木)

hermitage2017.jp どの国にも文化があり、歴史があり、美術があるように、ロシアにもそれがあるにもかかわらず、西洋のそれが上から覆いかぶさっているようで、よく見えない。もしかすると私だけが見えていないだけかもしれないけれど。 ロシアの歴史を考え…

多和田葉子『雪の練習生』

雪の練習生作者: 多和田葉子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2011/01メディア: 単行本 クリック: 24回この商品を含むブログ (50件) を見る 「読書をするなら、自分には理解できないかもと思う本を選べ」 という言葉を聴いたことがあるけれど、この本はまさに…

江國香織『なかなか暮れない夏の夕暮れ』

なかなか暮れない夏の夕暮れ作者: 江國香織出版社/メーカー: 角川春樹事務所発売日: 2017/02/10メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 海外のサスペンス小説にのめり込んでいる中年男性の小説。 と書いてしまうと何だか渋いような気がしてしま…

「エリザベス・ペイトン展:Still life 静/光」(原美術館)

どんな絵なのかを言葉で表現し難しい絵だった。でも、とてもよかった。 色も形も構想もマチエールもとてもよかった。 人物画、静物画とあるけれど、最初はマティスに少し似ていると思い、マネのようだという感想を聞き、ピカソのような佇まいの絵もあれば、…

多和田葉子『溶ける街 透ける路』

溶ける街 透ける路 作者: 多和田葉子 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社 発売日: 2007/05 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 4回 この商品を含むブログ (30件) を見る 「あ、この作家は当たりだ」と本を開いた瞬間にわかってしまい、思わず閉じてしま…

塩田武士『罪の声』

罪の声作者: 塩田武士出版社/メーカー: 講談社発売日: 2016/08/03メディア: 単行本この商品を含むブログ (12件) を見る グリコ森永事件をモデルにした小説である。社長の誘拐や、菓子への毒物混入などの重罪を犯したこの事件は、警視庁による重要指定事件と…

小川洋子『アンネ・フランクの記憶』

「『アンネの日記』に影響を受けて作家になった」と、 小川洋子は言っている。 その小川洋子が、アンネのいたアムステルダムを訪れ、 アンネと関わった人たちに話を聴いたというのが本書。 『アンネの日記」でしか会ったことのなかった人たちが、 実際に現代…

西加奈子『i』

i(アイ)作者: 西加奈子出版社/メーカー: ポプラ社発売日: 2016/11/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (7件) を見るアイデンティティのアイ、愛情のアイ、虚数という存在しない「i」、私の「I」。移民生まれで、アメリカ人と日本人の裕福な夫婦のもとに…

原田マハ『太陽の棘』

私は絵が好きだ。日本画西洋画かかわらず。しかし、明治〜昭和の日本人画家の描く洋画は、 西洋絵画(特に印象派)を取り入れたにも関わらず、 どことなく暗く、おどろおどろしいタッチのものが多く、 私はあまり好きではない。 (もちろん好きな画家はいる…

村上春樹『騎士団長殺し』

この作品は今後、村上春樹文学論を語るには決して外せない作品になる。面白さや読みやすさはないけれど、 村上春樹史上の最高傑作かどうかは疑問だけれど、 文学作品として、とても異色で、非常に高度な作品であると思う。 読みながら「ああ、いつもの村上春…

平野啓一郎 『マチネの終わりに』

『マチネの終わりに』(平野啓一郎、2016年、毎日新聞出版)「人は変えられるのは未来だけだと思い込んでいる。 だけど、実際には未来は常に過去を変えているんです。 変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。 過去は、それくらい繊細で、感じや…

小川糸 『ツバキ文具店』

『ツバキ文具店』(小川糸)文字の深さがあった。それも、手書きの文字。 主人公の鳩子(ぽっぽちゃん)は、厳しかった祖母から鎌倉の代書屋を引き継ぎ、 「ツバキ文具店」という看板を出して、文房具を売るかたわら、 誰かの代わりに手紙を書く仕事をしてい…

恩田陸『蜂蜜と遠雷』

恩田陸『蜂蜜と遠雷』ひたすらに音楽が流れていく小説。 国際ピアノコンクールの予選から本選までが、 息つく間もなく描かれている。 コンクールは1人あたり、10数曲を弾く。 次から次へとクラシック音楽が文章で描かれ、 音となって聴こえるのは、 私が知る…

映画「エベレスト」

映画「エベレスト」最近よく山に登る。 それに伴って、本や映画も山に関するものが多くなってきた。 今話題の映画「エベレスト 3D」。 1996年のエベレスト大量遭難事故をもとに描かれた今作は、 極限状況での人間の描き方や、 もはや人間にはどうすることも…

カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』

カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』 何が異色の小説なのかというと、物語の世界観がわからないまま物語が進む点。 その謎は、主人公たちの成長にあわせて理解できるところだけが、 大人によって意図的に(!)少しずつ明らかになる。 その片鱗を辿りな…

平野啓一郎 『本の読み方 スロー・リーディングの実践』

平野啓一郎著 『本の読み方 スロー・リーディングの実践』「本を読む」とはどういうことか。本屋に行けば、速読法の本が溢れている。皆、より多くの本を手にとろうとしている。 それもひとつの読書法であり、否定するつもりない。 だが、本を読むことはだ単…

「フランシス・アリス展」(東京都現代美術館)

フランシス・アリス展を観た。 ちょっとはっとした。砂塵を巻き上げる竜巻の中へカメラ片手に突入していく映像。 20分以上はあった。 その部屋に入ると、大きなスクリーンの前に、枕と敷布団が何個も用意されている。 つまり観客に「どうぞ寝ってころがっ…

「アントニオ・ロペス展」(Bunkamura)つづき

アントニオ・ロペス展を鑑た。 スペインで活躍中のリアリズム作家。 日本で今流行に極みみある「写実ブーム」だが、いったい写実とは何か?を 問い直す最高の機会を、bunkamuraがつくってくれたと思う。ロペスの作品は決して写真ではない。 確かに画像で鑑る…

「夏目漱石の美術世界展」(東京都藝大美術館)

「夏目漱石の美術世界展」を鑑た。 @藝大美術館 http://www.tokyo-np.co.jp/event/soseki/outline.html まさに漱石脳内美術館。 「吾輩」の装丁から始まり、 漱石が留学時代に見た ターナー、ロセッティ、 ジョン・エヴァレット・ミレイ、 サルヴァトール・…

村上春樹『色彩をもたない多崎つくると彼の巡礼の年』

村上春樹『色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年』について ネタバレなし。引用あり。 ストーリーは興味深くて最後まで読ませるだけの力はあったし、 「色彩」を軸に小説を進めつつ、 彼とヒロインとの会話は素晴らしいものであったけれど、 構成に関して…

「五百住乙人展」(京橋・金井画廊)

良い絵があった。「うずくまる」F8号 五百住乙人 「緑だ」と思った。全体が緑がかっている。 真ん中に大きく描かれた女性は横向きで、ひざをかかえてうずくまっている。 その女性と背景も全て淡い緑色。 女性は沈んでいるわけでも考え込んでいるわけでもな…

絵に刻む

絵を観るのと、本を読んだり映画を観たりするというのは、 全然違うと思う。絵を観るのは、絵から何かをもらうだけじゃなく、 絵に、自分の何かを刻む感覚に近い。部屋の片隅に飾ってある絵は、 とある洋画家が描いた男女の絵。 冷蔵庫近くに張ってあるカレ…

「ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー展」(横浜美術館)

ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー @横浜美術館沢木耕太郎『キャパの十字架』をようやく読み終え、美術館に行けた。ゲルダ。 同じ女性として、ゲルダの生き方は衝撃的だけど、 その激しさが作品にも見てとれた。 26歳で取材中に命を落とし、 以来、キャパの…

エル・グレコ展(東京都美術館)

2013年春 展覧会まとめ(2) エル・グレコ展さてと。 先輩と後輩の展覧会も観てくれたかね? ラファエロ先輩(ルネサンス)、ルーベンス君展(バロック)。 東京では今、いろんな西洋美術展覧会がおこなわれていて、 私たちのような過去の芸術家からしてみ…

クラコレ展(三菱一号館美術館)

クラーク夫妻が集めた印象派前後の作品。 とりわけルノワールの収集に熱心だったみたいで、 日本にあるルノワール作品とは質が違う。 見処はルノワール部屋の10数点。 他にも、コローからピサロ、シスレー、ドガ、カサット、モリゾなど。作家に関係なく青系…

「会田誠展」(森美術館)

会田誠展「天才でごめんなさい」@六本木森美術館会田クンって、デッサンできるのよね。 もちろんそれだけじゃないわ。 なんていったってカオもいいし、頭もいいんだから。え、どういうことかって? アンタ、展覧会観たのにわからないわけ? アンタバカァ? …

演劇「ねこねこでんわ」(小劇場楽園・下北沢)

「解釈は自由である」 「物事は底辺からはじまる」そんな言葉が飛び交う演劇を見た。 まさに言葉が“飛び交”っていて、劇中ずっと何かしら言葉が発せられていた。 面白いのは、登場人物の台詞ひとつひとつにそんなに意味はなく、 言葉の乱取り稽古に近いよう…

「アントニオ・ロペス展」(Bunkamura)

アントニオ・ロペス展を鑑た。 スペインで活躍中のリアリズム作家。 日本で今流行に極みみある「写実ブーム」だが、いったい写実とは何か?を 問い直す最高の機会を、bunkamuraがつくってくれた。ロペスの作品は決して写真ではない。 確かに画像で鑑ると、写…