たまに映画、展覧会、音楽など。

クラコレ展(三菱一号館美術館)

クラーク夫妻が集めた印象派前後の作品。 とりわけルノワールの収集に熱心だったみたいで、 日本にあるルノワール作品とは質が違う。 見処はルノワール部屋の10数点。 他にも、コローからピサロ、シスレー、ドガ、カサット、モリゾなど。作家に関係なく青系…

「会田誠展」(森美術館)

会田誠展「天才でごめんなさい」@六本木森美術館会田クンって、デッサンできるのよね。 もちろんそれだけじゃないわ。 なんていったってカオもいいし、頭もいいんだから。え、どういうことかって? アンタ、展覧会観たのにわからないわけ? アンタバカァ? …

演劇「ねこねこでんわ」(小劇場楽園・下北沢)

「解釈は自由である」 「物事は底辺からはじまる」そんな言葉が飛び交う演劇を見た。 まさに言葉が“飛び交”っていて、劇中ずっと何かしら言葉が発せられていた。 面白いのは、登場人物の台詞ひとつひとつにそんなに意味はなく、 言葉の乱取り稽古に近いよう…

「アントニオ・ロペス展」(Bunkamura)

アントニオ・ロペス展を鑑た。 スペインで活躍中のリアリズム作家。 日本で今流行に極みみある「写実ブーム」だが、いったい写実とは何か?を 問い直す最高の機会を、bunkamuraがつくってくれた。ロペスの作品は決して写真ではない。 確かに画像で鑑ると、写…

2012年の終わりに

悲しい哉、 日本人は30人の海外画家を思い浮かべることはできるのに、 日本人画家で30人は答えられない。美術の教科書を見ても、近代の日本人画家として知られているのは、 黒田清輝、浅井忠、青木繁、岸田劉生、……? 近代の洋画家といえば、ゴッホ、ゴーギ…

パリ、ユトリロ、雪

ユトリロの「白」は、うすいブルーグレイで、 その色で表現される雪は、本物のそれよりも雪らしいような気がする。 雪だけではない。 ユトリロの描くパリの街――とりわけ建物の壁や道――は、パリよりもパリらしいと思う。 なかには、パリの街にユトリロが色を…

「リヒテンシュタイン展」(国立新美術館)

きらびやかで豪勢な予感。が、的中の当展。 そもそもリヒテンシュタイン城がこんなにもロマンチックだ。オーストリアとスイスの間にあるこの小さな国(≒小豆島)は、 1719年に独立し、伯爵(現在は国家元首兼)がずっと国を守ってきた。 今も伯爵家が住むこ…

原田マハ『楽園のカンヴァス』

絵画は、 完全に物語を閉じ込めることができると思う。 本や映画は登場人物の趣味なり悩みなり (子どもはいるのかとか、人生に飽き飽きしているとか) を知ることができるけれど、 絵画は描かれている人物が何を考えているのか、 想像をめぐらせることしか…

安倍龍太郎 『等伯』

『等伯』 ーー安土桃山時代の絵師・長谷川等伯の画物語。戦国時代。嵐のような時代。 その時を駆け抜けた絵師の中で、 政(まつり)事と関わらずに 名を残した者がいるだろうか。時代を代表する狩野永徳も 力強い筆致で信長の肖像画を描いたが、 のちに秀吉の…

「シャルダン展」(三菱一号館記念美術館)

シャルダンが生きた18世紀フランスというのは一言で言えば“ロココ” ――雅宴(フェート・ギャラント)――の時代。 浮かんでくるのはフラゴナール、ヴァトー、ラ・トゥール、プーシェ…… 華やかな貴族風俗画、恋愛画が宮殿の壁を飾った画家たち。 フラゴナールの…

語り夜ver.1 『物語に彩りを  第五章』 

物語に彩りを 第五章 71年間、塗り重ねられた色 長い話になりました。おや、もうすっかり日が暮れてしまった。 一段とまた冷え込みましたな。 ピートが暖炉の前で眠り込んでしまいましたね。 御老人、せっかく来ていただいたのに、こちらが話してばかりで申…

語り夜ver.1 『物語に彩りを 第四章』

物語に彩りを 第三章 加わった色は暗色か明色か 運命の綻びは数週間後でした。 5月になってすぐ、ドイツ軍がユダヤ人自主退去を発令。 祖父はポーランド人なので問題なかったのですが、 予感は的中してしまいました。 ある昼下がり、めったに鳴らない画廊の…

語り夜ver.1 『物語に彩りを  第二、三章』 

物語に彩りを 第二章 淡く儚い緑色 時刻はそう、その絵が描いているような夕暮れ時でした。 祖父が聖マリア教会の傍を通りかかると、 何かをじっと見つめている10歳ぐらいの少年を目にしました。 靴も服もボロボロ、けれど不思議なオーラを放っていて、 色で…

語り夜ver.1 『物語に彩りを  第一章』 

『物語に彩りを』 はじめに 1940年、そして2011年のポーランドの都市、クラクフ。 クラクフは、ポーランドの京都と呼ばれ、 聖マリア教会、市庁舎、織物取引所、ヴァヴェル城などを中心に 市街地が広がっている。 13世紀に建てられた聖マリア教会からは、毎…

華恵 『本を読むわたし』つづき

前回の本夜vol.2『本を読むわたし』(華恵)。 華恵さんの話にはつづきがある。先月「連塾」というイベントで 華恵さんがトイピアノを使って「はせがわくんきらいや」を朗読していたのが、 私が華恵さんの本を読むようになったきっかけ。 (「はせがわくんき…

華恵 『本を読むわたし』

2011年、出会えて一番嬉しかった本。 『本を読むわたし』 華恵 筑摩書房 「いつも本があった」という華恵さんの、本(物語)についてのエッセイ集。 ひとつひとつの物語にくるまれているような感覚になった。 今夜はその中のひとつについて書こうと思う。 「…

ヨースタイン・ゴルデル 『ソフィーの世界』

『ソフィーの世界』 ヨースタイン・ゴルデル NHK出版「あなたは誰?」 もうすぐ15歳になる女の子・ソフィー・アムンセンの元にそんな手紙が届けられる。 哲学の先生・アルベルトから届く膨大な手紙。 哲学講座の始まりだ。 「あれからもう随分経つのね、…

「青木繁展」(ブリヂストン美術館)美文方程式Vol.4

美文方程式Vol.4 「光あれ」 美術 <『それから』> 文学海底、それは誰も知らない2人だけの世界。 心地よい世界、命生まれる場所。 それを描いたのが前回紹介したこの作品。「わだつみのいろこの宮」 1907年(明治40年) 白馬会で3等賞という不当な結果に…

「青木繁展」(ブリヂストン美術館)美文方程式vol.3

美文方程式vol.3 「Paradise Under The See」 〜 美術 <「大つごもり」> 文学 紺碧という色に恋して、もう何年になるだろう。それは深い海底の色、人が知ることのできない地球の素顔。 海……それは命漂う世界、身体のようにふわふわと命泳ぐ。 心のように…

「青木繁展」(ブリヂストン美術館)美文方程式vol.2

美文方程式vol.2 「浜から海をみる」 〜美術 <「海の幸」> 文学 舞台は、海から始まる。 目を閉じてみよう。 潮の香りと、打ち寄せる波の音に身体を預けてみよう。 白い波が静かに浜に寄せるその永続的な繰り返しに心を預けてみよう。 足裏の砂粒を感じた…

「青木繁展」(ブリヂストン美術館)美文方程式vol.1

美文方程式vol.1 「間合いをとる」 江國香織と辻一成の2人によって編まれた小説『冷静と情熱のあいだ』。冷静 < > 情熱あおいと順正にとって、この“あいだ”には何があったのだろう。 揺れ動く2人の感情、過去と現在の錯綜、ミラノとフィレンツェという…

「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」(国立美術館)後記 

国立新美術館でおこなわれた「ワシントン・ナショナル・ギャラリー」。 せっかくの機会だったので、テーマもいろいろ変えてみました。 レイモン・クノー『文体練習』という本をめくりつつ、 図録をめくりつつ、画家それぞれの人生を調べながら……。 いろんな…

「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」(国立美術館)08

第三章 ポスト印象派以降 7. 青い意思 フィンセント・ファン・ゴッホ「自画像」1889年 不吉な風が吹いている 遠くで雷が鳴っているわたしは…… 問いかけられる 責められる 考える うなだれる 温度が下がる 足がすくむ だけど見入ってしまう目をそらし続けて…

「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」(国立美術館)07

第三章 ポスト印象派以降 印象派が切り開いた新しい美術の地平。 都市と周辺の身近な情景を主題に、 明るい色彩と素早いタッチで戸外の光を表現した印象派の絵画に魅惑されたのが、 ポール・セザンヌ、 ポール・ゴーギャン、 フィンセント・ファン・ゴッホ、…

「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」(国立美術館)06

第二章 印象派 5.青の欠片を拾った メアリー・カサット「青いひじ掛け椅子の少女」 親愛なるキティーへあなたから手紙の返事がもらう前に、私は既にこうしてあなたへの手紙を書き始めています。 前回のお手紙でお伝えしたように、 ようやく自分の絵がふさ…

「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」(国立美術館)05

第二章 印象派 4.こんなドレスに触りたい ピエール=オーギュスト・ルノワール「踊り子」(1874年)ねぇ、どうこの絵? 可愛いって思う? ま、あんまり可愛いとは言われないんだけどね。そこがちょっと残念。そりゃあもちろん、少し恥ずかしかったわよ。 …

「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」(国立美術館)04

第二章 印象派 印象派について今更きちんと述べずとも、 この絵を観れば、印象画家の醍醐味は十分に伝わるはず。 この章でご紹介するモネ、ルノワール、カサット。 三人の描く世界をそのまま感じる、それがそのまま印象派の世界だと思うのです。 3.光の層…

「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」(国立美術館)03

第一章 印象派以前 2.逃れられない二項対立図? でた、マネ。問題児マネ。 まずはこれ。「草上の昼食」1863年 「オランピア」1865年 サロン(官展)のに不満をもった画家たちが開催した落選展に出品した2作品で、 未だかつてない題材に物議を醸したことで…

「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」(国立美術館)02

第一章 印象派以前 モネの「印象・日の出」や「睡蓮」に代表されるような印象派絵画というのは、 そこに到達するまでに様々な変革がおこる。 時は19世紀、パリ。 聖書・神話・歴史がテーマの絵画からの逸脱を図り、 ありのままの自然や現実を描かれるように…

「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」(国立美術館)01

誰もがアリスになれる場所 ワシントン・ナショナル・ギャラリーから もくじはじめに 第一章 印象派以前1.空・川・森 シャルル=フランソワ・ドービニー「オワーズ川の洗濯女たち、ヴァルモンドワ近郊」2.逃れられない二項対立図 エドュアール・マネ「鉄…