たまに映画、展覧会、音楽など。

おすすめの本

元気にしていますか?
「今日何したの?」と聞くと
(プールのことを)「うみ!」と答えたあなたは
きっと今日も元気に幼稚園のプールに入っていることでしょう。

きっとあなたのママは薦めることがないと思うので、
私から15年後の夏にオススメの本を2冊紹介しておきます。

夏に似合う、涼しげな本です。


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ミステリアスな夜を。
本多孝好『Missing』

短編小説だから、たとえあなたが本嫌いになったとしても(そんなことはまずないと思うけど)
きっとどれか一つは面白く読めると思います。

これをミステリーというのでしょうか。
この作家の特徴は<論理性>にあると私は思っています。

死んだ妹のフリをし続ける女性の描いた「祈灯」、
自由奔放に生きた女性の一瞬を描いた「瑠璃」、
人を殺さずにはいられない大学教授が主人公の「彼の棲む場所」。
誰も皆、少しずつだけれど狂っています。


それどころか、相当に狂っています。


それを目撃している主人公の青年は、何だかちょっとカッコイイ。

今ドキの女の子の心をつかむような、
耳をすませば」の男の子が成長したような、
ノルウェイの森」の主人公のような、
論理的で、知的な青年です。

きっと、あなたも気に入るはず。

話を元に戻すと、物語の構成力が半端ないんだと思います。
乙一のような意外性と、宮部みゆきのような構成力、
春樹のような筆圧。

そして主人公の彼がいることで物語に奥深さが生まれて、
彼と一緒に物語が進んでいって、翻弄されていく。

う〜ん、翻弄という言葉は違うな。

彼と一緒に物語が進んでいって、一緒に翻弄されていく。


おまけに彼の言葉は皮肉たっぷりでユーモラス。
もちろん文体もリズミカル。

さて、問題です。
「人はなぜ人を好きになるのでしょう」
「アリクイなんて好きになっても仕方がないから」
さあ、あなたはなんて答える?


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曲がった道の先にあるものは。
湊かなえ『告白』

今年の本屋大賞作品です。
今、どこの本屋でも平積みされているけれど、
きっとあなたがこの本を知る頃にはネットで販売されてるくらいなんでしょう……。


東野圭吾が好きならば、この本が好きでない理由がない。

あらゆる所にしかけられた罠。
私は物語を途中で切り倒して
元に戻って読み返すなんてナンセンスなことをしないタチなので、
いつも最後のほうで息をのむエンディングを迎えています。

あなたもそうならば、この本を楽しむことができるのかも。


ん?と思うエピソードが結局は重要なポイントにだった事はよくあることで、
逆にそれがはっきりしすぎることも。

例えば『天使と悪魔』(映画ver.)や
アマルフィ』(映画ver.)がそうで、
ガッカリしたシーンもあったけれど、この短編小説(そうこれも短編です)は一味違う。

いくつもの絡み合った糸が最後には綺麗にほどける。
ひとつの言葉にしかけられた意味はひとつではないということを、
この作家で私は知りました。

天才作家はかくありき。
こんな卒論を書きたいと思っている私は無謀でしょうね(笑)

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15年後。
良い本とめぐり合えますように
姉の娘なら、きっと大丈夫。