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「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」(国立美術館)03

第一章 印象派以前 


2.逃れられない二項対立図?


でた、マネ。問題児マネ。
まずはこれ。

「草上の昼食」1863年

オランピア」1865年


サロン(官展)のに不満をもった画家たちが開催した落選展に出品した2作品で、
未だかつてない題材に物議を醸したことであまりにも有名である。
マネは世界各国をめぐり過去の絵画を学んだだけでなく、
スペイン絵画や日本の版画にある平面的な色面構成を取り入れようとした。
しかし彼の度肝のぬくような絵画はすぐには受け入れられず、
マネに共感する若い画家たちは、カフェに集まっていたという。
実は印象派とは一定の距離をとり続けていたものの、
マネの作品が印象派に影響を与え、
次第にマネ自身の作風も印象画家たちに影響されていった。
やはり印象派確立には欠かせない画家。


そして今回ワシントン・ナショナル・ギャラリー展で陳列されていた作品
「鉄道」 1873年


よく見てみる。
けれど、よく見えない。そう、タイトルにある<鉄道>が見えないのだ。
二人の邪魔で見えずに思わず首を伸ばしてしまう。
やっぱり鉄道は見えない。

仕方なく、二人の人物をよく見てみる。
よくよく見てみる。すると見えてくる。
女性/少女
前を向いている/後を向いている
立っている/座っている
髪をおろしている/アップにしている
白で飾られた青のドレス/青リボンで飾られた白のドレス
この二項対立を象徴しているかのような格子がどうしようもなく気になる。
この格子が表すところは一体何だろうか?

当時の批評家たちは次のように語り、あざ笑っていたという。
「なんとも不運なものたち。
こんなふうに描かれているのを知って、彼らはそこから逃げ出したがっている。
だが画家はそれを見越していた。
彼らの逃亡を阻むために、格子をたてたのだ。」

振りかえってみれば、19世紀のヨーロッパは近代化の最中。
都市がみるみるうちに成長し、活発化していく。
この駅もパリで最も列車運行がさかんなところで、
マネはそんな様を伝統的な手法から抜け出して描き出したのだ。
この二項対立は伝統と革新なのか、自然と都市なのか、はたまた過去と未来なのか??
退屈そうな婦人と、汽車を見つめる少女を見ていると、
時代に対する諦観と希望を描いているような気もしてくる。


マネのもっとも美しく謎にみちた作品。