たまに映画、展覧会、音楽など。

絵に刻む

絵を観るのと、本を読んだり映画を観たりするというのは、
全然違うと思う。

絵を観るのは、絵から何かをもらうだけじゃなく、
絵に、自分の何かを刻む感覚に近い。

部屋の片隅に飾ってある絵は、
とある洋画家が描いた男女の絵。
冷蔵庫近くに張ってあるカレンダーの原画を描いた人と同じ人だ。
静物も風景も建物も描く作家。
少し暗くて哀しくて、形もデフォルメされてて、
ねじれたり歪んだり曲がったり。

部屋で一人でいるとき、大抵その絵を観ている。
考え事をしているとき、
悩み事をしているとき、
朝起きてぼーっとしているとき、
一人で夜、お酒を飲んでいるとき・・・。
私の友人みたいなもので、
私のすべてを共有されている感じさえする。

その絵は額から出ることなく、
(つまり、ある程度の距離を保ったまま)
これからの私の人生に存在し続ける。

そう思ったら、どんな絵を部屋に置いて、
愛して、日々過ごしていくかということは、
自分がどんな人間なのかがよくわかる。

食べ物が人の身体を作るように、
絵が、音楽が、言葉が、人の心を創る。

好きな人と生きていきたいように、
好きな絵と生きていきたい。