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たまに映画、展覧会、音楽など。

サマセット・モーム『人間の絆』

読みかけの本、
読んだけれど近いうちに読み返そうと思っている本、
読まなければいけないのにまだ読んでいない本。

今回は、3つ目にあてはまる本。
卒論のためにはまず読まなければと思ってずっと避けてきた本、
だって説教じみてそうで、堅苦しそうで、
少年が大人になるまでの人生の本なんて、気が遠くなる――。

けれど、この本はおすすめです。
『人間の絆』
モーム作 行型照夫訳 岩波文庫

画家を志した少年が、単身パリに留学。
そして絵の勉強を始めるも、自分は二流にしかなれないことを悟り、
画家を諦める。
様々な恋愛体験、仕事、壮絶な極貧生活を経て、
幸せな結婚をするという半自伝的小説だ。

なんとまぁありきたりな物語。

けど私が気に入っている箇所は、
ある芸術家に人生の意味を尋ねたときに、
ぼろぼろのペルシャ絨毯の切れ端をもらって、

人生の意味を考え続けるところ。

ある芸術家は「人生の意味はこのペルシャ絨毯にある」、と言う。
そこで主人公はそれを大切にし、人生の意味を考える。


人生の見方や、芸術に関する考え方、
陥ってしまう、どうしようもない、これぞ人間らしいといえる感情。


画家というものは誰もがなれるものではなくて、
生きている頃は無名で死して有名になった人や、
今もまま名を知られていない画家もいるだろう。

貧しい生活を強いられ、誰も認めてくれず、
それでも絵を描こうとする、無鉄砲な、勇気ある人々。


けれど、いくらそれが素晴らしい行為だとしても、



彼らは朽ち果てて死んでしまう。


敬愛する画家の友達が、結局売れないまま、無残な死を遂げたときに、
主人公は再び自分に問う。
「人生なんて一体なんのためにあるんだ!」



そのとき、主人公は答えがわかる。

(本文より)
今になって突然答えが分かった。彼は忍び笑いをもらした。(中略)
答えは明瞭だ。



人生に意味はない――(中略)



人は生きることで何らかの目的を達成することはない――



ペルシャ絨毯の織匠が精巧な模様を織り上げていくように、
人も人生を一つの模様に織り上げたらよいのだ、とクロンショーは教えたかったのだ。
フィリップはそれまで、人はある目標に向かって生きるべきだと思い込み、努力を重ね、挫折を繰り返してきたが、ペルシャ絨毯の謎を解いた途端に、義務の意識から解放されたのである。


なるほどね。
人生に意味はない。
自分の人生って、絨毯を織っているようなもので、
それを自分なりに織るだけ。

題名『人間の絆』(絆には束縛という意味が本来ある)にあるように、

主人公は、
夢、 目標、
どうしようもない堕落した女(けど主人公は好きだった)
というあらゆる束縛から解放される。

これを読んで、 自分自身、あらゆることに束縛されていることを知った。
けど、主人公がそうであったように、 その全てから逃れられることは不可能。
けど、その束縛を知り、少し自由になれたような、気がする。

現実社会を知らない、まだまだ甘ちゃんの私ですが、
新年早々、
夢に縛られることなく生きることを決意いたしました。