たまに映画、展覧会、音楽など。

2011-01-01から1年間の記事一覧

華恵 『本を読むわたし』つづき

前回の本夜vol.2『本を読むわたし』(華恵)。 華恵さんの話にはつづきがある。先月「連塾」というイベントで 華恵さんがトイピアノを使って「はせがわくんきらいや」を朗読していたのが、 私が華恵さんの本を読むようになったきっかけ。 (「はせがわくんき…

華恵 『本を読むわたし』

2011年、出会えて一番嬉しかった本。 『本を読むわたし』 華恵 筑摩書房 「いつも本があった」という華恵さんの、本(物語)についてのエッセイ集。 ひとつひとつの物語にくるまれているような感覚になった。 今夜はその中のひとつについて書こうと思う。 「…

ヨースタイン・ゴルデル 『ソフィーの世界』

『ソフィーの世界』 ヨースタイン・ゴルデル NHK出版「あなたは誰?」 もうすぐ15歳になる女の子・ソフィー・アムンセンの元にそんな手紙が届けられる。 哲学の先生・アルベルトから届く膨大な手紙。 哲学講座の始まりだ。 「あれからもう随分経つのね、…

「青木繁展」(ブリヂストン美術館)美文方程式Vol.4

美文方程式Vol.4 「光あれ」 美術 <『それから』> 文学海底、それは誰も知らない2人だけの世界。 心地よい世界、命生まれる場所。 それを描いたのが前回紹介したこの作品。「わだつみのいろこの宮」 1907年(明治40年) 白馬会で3等賞という不当な結果に…

「青木繁展」(ブリヂストン美術館)美文方程式vol.3

美文方程式vol.3 「Paradise Under The See」 〜 美術 <「大つごもり」> 文学 紺碧という色に恋して、もう何年になるだろう。それは深い海底の色、人が知ることのできない地球の素顔。 海……それは命漂う世界、身体のようにふわふわと命泳ぐ。 心のように…

「青木繁展」(ブリヂストン美術館)美文方程式vol.2

美文方程式vol.2 「浜から海をみる」 〜美術 <「海の幸」> 文学 舞台は、海から始まる。 目を閉じてみよう。 潮の香りと、打ち寄せる波の音に身体を預けてみよう。 白い波が静かに浜に寄せるその永続的な繰り返しに心を預けてみよう。 足裏の砂粒を感じた…

「青木繁展」(ブリヂストン美術館)美文方程式vol.1

美文方程式vol.1 「間合いをとる」 江國香織と辻一成の2人によって編まれた小説『冷静と情熱のあいだ』。冷静 < > 情熱あおいと順正にとって、この“あいだ”には何があったのだろう。 揺れ動く2人の感情、過去と現在の錯綜、ミラノとフィレンツェという…

「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」(国立美術館)後記 

国立新美術館でおこなわれた「ワシントン・ナショナル・ギャラリー」。 せっかくの機会だったので、テーマもいろいろ変えてみました。 レイモン・クノー『文体練習』という本をめくりつつ、 図録をめくりつつ、画家それぞれの人生を調べながら……。 いろんな…

「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」(国立美術館)08

第三章 ポスト印象派以降 7. 青い意思 フィンセント・ファン・ゴッホ「自画像」1889年 不吉な風が吹いている 遠くで雷が鳴っているわたしは…… 問いかけられる 責められる 考える うなだれる 温度が下がる 足がすくむ だけど見入ってしまう目をそらし続けて…

「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」(国立美術館)07

第三章 ポスト印象派以降 印象派が切り開いた新しい美術の地平。 都市と周辺の身近な情景を主題に、 明るい色彩と素早いタッチで戸外の光を表現した印象派の絵画に魅惑されたのが、 ポール・セザンヌ、 ポール・ゴーギャン、 フィンセント・ファン・ゴッホ、…

「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」(国立美術館)06

第二章 印象派 5.青の欠片を拾った メアリー・カサット「青いひじ掛け椅子の少女」 親愛なるキティーへあなたから手紙の返事がもらう前に、私は既にこうしてあなたへの手紙を書き始めています。 前回のお手紙でお伝えしたように、 ようやく自分の絵がふさ…

「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」(国立美術館)05

第二章 印象派 4.こんなドレスに触りたい ピエール=オーギュスト・ルノワール「踊り子」(1874年)ねぇ、どうこの絵? 可愛いって思う? ま、あんまり可愛いとは言われないんだけどね。そこがちょっと残念。そりゃあもちろん、少し恥ずかしかったわよ。 …

「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」(国立美術館)04

第二章 印象派 印象派について今更きちんと述べずとも、 この絵を観れば、印象画家の醍醐味は十分に伝わるはず。 この章でご紹介するモネ、ルノワール、カサット。 三人の描く世界をそのまま感じる、それがそのまま印象派の世界だと思うのです。 3.光の層…

「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」(国立美術館)03

第一章 印象派以前 2.逃れられない二項対立図? でた、マネ。問題児マネ。 まずはこれ。「草上の昼食」1863年 「オランピア」1865年 サロン(官展)のに不満をもった画家たちが開催した落選展に出品した2作品で、 未だかつてない題材に物議を醸したことで…

「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」(国立美術館)02

第一章 印象派以前 モネの「印象・日の出」や「睡蓮」に代表されるような印象派絵画というのは、 そこに到達するまでに様々な変革がおこる。 時は19世紀、パリ。 聖書・神話・歴史がテーマの絵画からの逸脱を図り、 ありのままの自然や現実を描かれるように…

「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」(国立美術館)01

誰もがアリスになれる場所 ワシントン・ナショナル・ギャラリーから もくじはじめに 第一章 印象派以前1.空・川・森 シャルル=フランソワ・ドービニー「オワーズ川の洗濯女たち、ヴァルモンドワ近郊」2.逃れられない二項対立図 エドュアール・マネ「鉄…

「藤城清治展」(自宅スタジオ)

先日、藤城清治の個展に足を運んだ。 その色鮮やかな影絵の世界を観ていると、色は朽ちないものと信じてしまう。 そして影の世界からひょっこり現れる愉快な仲間たちに、私はいつも微笑み返してしまう。 にこり。そのとき、小人が一人、私の元に飛び込んでき…

高木正勝「Girls」

今日は音楽の話。聴けなくなった音楽がある人は多いだろう。 かつてあんなに聴いていたあの曲が、 今はあまり心に響かなくなって聴かなくなったり、 あるいは聴くのに耐えられないくらい切ない思い出が入り込んでいて聴けなくなったり。音楽は、あらゆる芸術…

「シュルレアリスム展」(国立新美術館)

今日の話題は、シュルレアリスム。そう、精神の最大の自由。 「シュルレアリスム、男性名詞、心の純粋なオートマティスムであり、 それにもとづいて口述、記述、その他あらゆる方法を用いつつ、思考の実際上の働きを表現しようと企てる。」 言ってしまえば、…

村上春樹 『スプートニクの恋人』

彼がやってきた。こんな文章も書けるんだね、知らなかったよ。 私は、素敵な文章を書く人が好き。 いつも恋をしてしまう。いつも、いつまでも。今までの文章は明確でかつ緻密で、読者にどこにも入らせる隙を与えなかったのに、 回はまるでジェットコースター…

「フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展」

多くの日本人に愛されている画家といえばフェルメールが頭に浮かぶ。 2009年のルーブル展のときに観た「レースを編む女」。 彼女の細やかな手つきに惚れた私も、 多くの日本人と同じく、フェルメールの創りだす世界を心から心から愛してる。 今回もその「細…

プラーツ『ムネモシュネ』、松岡正剛『多読術』

実は、ひそかに父がブログを書いている。 気まぐれに覘いているのだけれど、 同じ本を手にとっていることに気づき、失笑してしまった今宵(笑) (『思考の整理学』について書いていた) まだ読み終えていないので、先を越されたようで心外だが、 年末年始に実…

「樹と言葉展」(高知県立牧野植物園)

〜牧野植物園にて、いしいしんじのトークライブに行ってきました。 今、“目の前で”小説が紡がれていく。 カリカリという鉛筆の音と、言葉を読み上げていく声だけが、 小説が生まれていく瞬間を刻みつける。 鉛筆の黒鉛の先から形づくられている言葉は、 葉が…

松岡正剛 『知の編集術』

2010年から2011年にかけて、こもることにしました。 高知でもなく山口でもなく、 父方の実家にて、本とともに埋もれています(笑) ……というのも半分くらいうそで、実家のお正月の準備で忙殺。 大晦日から徹夜で本を読みましたが、 仏壇の前なので、なんだか、…