たまに映画、展覧会、音楽など。

春江一也『カリナン』

春江一也 『カリナン』読了。
喫茶店でお昼食べながら読み始めたらそのままはまっちゃって、
喫茶店3軒ハシゴして、一日で読みきってしまった。

プラハの春』『ベルリンの秋』
に続く、この『カリナン』

今度の舞台は、フィリピンだ。

情けない話、
全く知らない世界を突きつけられて、ショックを受けた。
だから、歴史って怖い。
知らない部分が多すぎる。


1941年から1945年にかけての大東亜戦争
フィリピンで農業を営み成功を治めた日系フィリピン人たちは、
この戦争で大きな打撃を受けた。

父親や少年たちは召集され、
母親や娘たちは戦火から逃れ、密林の中をさまよう。
途中飢え死にする者
撃たれて死ぬ者、
捕まって慰みものにされる者。

戦後、
生き残った多くの者たちは日本帝国の民として恨まれることとなる。
自分たちは関係ないのに、
日本人だからという理由で、石を投げられ、
忌み嫌われる運命となった彼らたち。
故郷のように思っていたフィリピンなのに。


一方、フィリピンを占領した日本兵の仕打ちについて、
一体どのくらいの日本人がきちんと把握しているのだろうか。
腹いせに赤ん坊を銃剣で刺し殺したり、
とある山間に逃げ込んだ追い詰められた日本兵たちは、
そこに住む村民30人あまりを殺し、
人肉として常食していたという。

これらの事実が日本ではタブーでまだほとんど公表されていない。

けれど、これでフィリピン人にとってどれだけ日本人が憎いか、
なんとなく、わかる。



この事実を元に物語はすすんでいく。


健やかなるフィリピーナであるアリシアと、
フィリピンで果敢に生きた父をもつ主人公の物語。

主人公は、フィリピンで生まれるものの、
戦争が激しくなり、父親は殺されてしまう。
育ての母であるフィリピーナによって守られるが、
日本に送還。
そのときの記憶をほとんど忘れて、
日本でエリートとして歩んでいく。

しかしひょんなことから、
フィリピンのことを断片的に思い出すようになり、
フィリピンで劇的に育ての母(アリシアの祖母)に再会する。

そこでストリートチルドレンに衝撃を受けた主人公は、
ここで生きていくことを決意するのだが……。

話のストーリーよりもこの歴史に衝撃を受けたのと、
主人公の父親の姿に泣いた。

戦争の傷跡。
今、フィリピン人が多く日本に来ており、
看護師として働いていたり、
夜の仕事をしている。
日本は稼ぎがいいからと。

日本人の一部では、
フィリピンツアーが行われている。
売春ツアーが。

そんなんでいいのかなぁ。
そんなんで日本はいいのかなぁ。